


歯周病原性細菌は、インベーダーとして侵入し、お互いコミュニケーションをとりながら集団となって歯周局所に住み着く。歯周ポケット内の歯周病原性細菌は、種類を超えてシグナルで会話しながら数の調節や病原性さえ調節する連中である。
歯周病原性バイオフィルムは、チャネルを介して歯肉溝滲出液を栄養源として取り入れ、自分たちの環境を破壊するような老廃物を排出して持続感染する。住み着いた嫌気性細菌群は、毒素や組織破壊性の酸素を分泌し、歯肉の炎症を起こし、潰瘍を作り、細胞の結合を破壊して歯周ポケットを形成し、爆発的に増える。それらの細菌群は、上皮細胞などに侵入することができるインベーダーである。

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歯周病と全身疾患の関連性を下図にまとめた。
歯周病原性細菌を中心とした口腔内バイオフィルム細菌は、唾液中に混入し、誤嚥によって下気道に流入して呼吸器感染症を起こす。一方、バイオフィルムから遊離した細菌や、細菌産生毒性物質は、歯周ポケットから頻繁に血流中に入り込んでいる。血流に入り込んだ口腔内細菌は、心臓弁膜に障害がある場合、そこでバイオフィルムをつくり細菌性心内膜炎を起こす。これらの疾患は、歯周病が暗殺者ともいえる細菌の巣窟であり、その治療や予防の重要性から、歯周病を単なる口腔慢性感染症としてよりも全身疾患と考えるべきであろう。

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誤嚥性肺炎は、口腔・咽頭に潜伏している細菌の不顕性誤嚥が原因となる。誤嚥は、嚥下反射と咳反射の低下などに伴って生じ、特に脳血管障害の見られる高齢者に多い。そのような高齢者の口腔内には、デンタルぷラークや、デンチャープラークだけでなく、歯周ポケット内、舌背、頬、咽頭、粘膜などにさまざまな微生物がバイオフィルムを形成して持続感染している。それらのバイオフィルム形成細菌や細菌が付着した剥離細胞が唾液に混入して、唾液といっしょに誤嚥され下気道に流入することが原因となる、
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人工呼吸器を口腔や鼻から入れているICUなどの患者は、肺炎になるリスクが極めて高い。
人工呼吸器関連性肺炎は、発症すると死亡率も高いし、回復しても入院期間が長引いてしまう。口腔清掃を中心とした口腔ケアがその予防に効果的である。

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ウィルス性呼吸器感染症が危篤になる多くのケースでは、その病原性ウィルスに先だって口腔・咽頭粘膜に細菌感染が見られ、その細菌による二次感染も見られる。咽頭粘膜に存在する呼吸器病原体ウイルスレセプターは、唾液の糖タンパク成分によって隠蔽されているが、微生物の酵素によって切断され露出する。また、咽頭などに感染しているブドウ球菌や緑膿菌のプロテアーゼは、インフルエンザウィルスの表層抗原であるHA1を修飾して、インフルエンザウィルスの細胞侵入をサポートする。歯周病原性細菌が産生するプロテアーゼも、インフルエンザウィルス感染をサポートする可能性がある。
要介護高齢者に対する継続した口腔衛生を中心とした口腔ケアは、有意に誤嚥性肺炎を低下させることができた。また、デーケアに通う要介護高齢者に対する歯科衛生士による口腔清掃を中心とした口腔ケアは、インフルエンザ発症を抑える効果を発表してきた。

