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1998年に肥満と歯周病が関係していることが初めて報告された。九州大学予防歯科と福岡市健康づくりセンターとの共同研究である。その後、2000年以降、歯周病と肥満との関係を示す論文がいくつも発表されているが、ほとんど時間軸のない断面的な研究であることから、肥満が歯周病のリスクファクターであるかどうかは、まだ科学的には証明されていない。過去をひも解いてみると、唯一1977年に動物実験で、肥満で高血圧のラットは歯周炎が悪化しやすいという論文が米国で発表されているが、意外なことにそれ以降の報告はない。
糖尿病が悪化すると歯周病になりやすいことは古くから数多く報告されており、1990年代には歯周病は糖尿病の6番目の「合併症」であるとされている。肥満は糖尿病の直接的な原因であることが分かってきたので、糖尿病前段階の肥満が歯周病を悪化させている可能性がある。そこで経口糖負荷試験を行い、血糖コントロールの状態と肥満の程度とどちらが歯周病に関与しているかを分析した研究がある。これによると肥満は血糖コントロールの悪化した状態や糖尿病とは関係なしに歯周病と関連していた。つまり糖尿病は全身にくまなく悪影響を及ぼすが、その悪影響とは別個に肥満は歯周病に直接関連しているということがわかった。そのメカニズムはまだ不明であるが、前述のように脂肪組織からはTNF-αを初め、炎症や免疫機能に影響するさまざまなアデイポカインが分泌されている。
実際のところ、TNF-αは炎症によって歯周病の局所でも分泌されており、歯周組織を破壊している。すなわち、これらアデイポカインのうちのいくつかが歯周病に関与しているのではないかと現在のところ考えられている。

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2007年7月にたいへん興味深い論文がフランスから発表された。グラム陰性菌の周囲に付着している内毒素を構成するリポ多糖は細菌による炎症の元となる物質なのだが、そのLPSを4週間持続的にマウスの皮下に埋め込むと、それだけで肝臓と脂肪組織に脂肪の沈着が起き、その重量が増し、体重が増加するというのだ。そしてそれは高脂肪食によってさらに増強され、インスリン抵抗性をへて糖尿病となるらしい。さらに面白いことに高脂肪食のみ与えても無菌動物では体重の増加は起こらず、腸内のグラム陰性菌かあるいは外部から直接LPSを体内に入れることによって初めて肥満が起こるらしい。
以前からLPSが非アルコール性の脂肪性肝炎(NASH)の原因である可能性は指摘されていたが、これまであまり研究されてこなかった。歯周病の原因となる菌の多くはグラム陰性菌でLPSを周囲に張り付けており、これらは常に持続的に血中へ移行している。つまり歯周病が肥満の原因のひとつとなっている可能性が考えられるのである。我々の研究からも、歯周病患者の血液検査の結果は脂肪肝を示唆させる検査結果と非常に強く関連していることが明らかになっている。また、最近話題のメタリックシンドロームと歯周病が関連していることや、歯周ポケットが深いと血糖コントロールが悪化しやすいことなども明らかにされてきた。
あまり食べないのに太りやすいという人は、腸内や歯周ポケットに内毒素を保有するグラム陰性菌をたくさん持っているのかもしれない。肥満が気になる方はやはり歯周病の検診を受けるべきであろう。


